2011年03月

2011年03月31日

被災自治体の医療システム再構築が急務だ=山本保博

 本日の毎日新聞東京朝刊の記事です。被災地域の医療支援、復興支援は最優先に進める必要があります。是非とも、一日も早い復興を願ってやみません。内容は下記の通りです。


◇災害派遣医療隊の活用を−−東京臨海病院病院長・山本保博 
『東日本大震災においては被災地域が南北500キロもあり、市町村集落に通じる交通網は津波によって完全に遮断された。空路しか人的・物的支援が輸送できない状況に陥ったことが被害をより拡大した。地域ごとに地震津波災害の程度、住民の年齢層、家族単位数、経済状況などが異なるので、災害医療の対応にも地域差が出てしまった。
 地域医療を支えてきた医療界が壊滅し、指揮・命令を出せる指導者がいなくなった。全国から災害医療の専門医を派遣してもらい、システム構築を急ぐ必要がある。自治体に医療の対策本部をつくり、医療需要の先を見越しながら優先順位をつけて指揮をとれる人材が必要だ。
 全国からの大勢の医療ボランティアの活躍には頭が下がるが、支援ラッシュが終わっても災害医療はニーズを変えながら数年にわたり続いてゆく。初期は外傷を中心とした急性期、次に感染症を中心とした亜急性期、その後は心のケアを中心とした慢性期に移っていく。地域医療の再生も後押ししなければならない。
 災害医療では3Tの重要性が指摘される。避難所や在宅被災者で救急患者が発生した場合、緊急度と重症度から治療の優先度を決定(Triage)し、応急処置(Treatment)と搬送(Transportation)を行い、最も適切な医療機関で治療することが重要だ。
 私は、患者が多く血液透析など地域の病院では手に余る場合、広域搬送を考えることが必要であると考えている。東北地方の長い海岸線を考えると、大型病院船による搬送や治療が有効であろう。患者を運び入れながら運航し、目的地に向かうのである。この種の大型病院船は日本ではまだ存在しないので、都道府県で大型客船等を契約しておき、災害時に派遣させることができればと考えている。被災地や避難所において、インフルエンザや食中毒等の感染症の流行が起こったり、福島第1原発事故がより危険性を増して緊急対応が必要になったような場合にも、長距離搬送が必要になる。
 日本の災害医療は、阪神大震災までは「待ちの医療」で災害現場に入らず、病院で負傷者が運ばれてくるのを待っていた。阪神大震災後に発足した日本DMAT(災害派遣医療チーム)の活躍は、東北の各地域で目を見張るものがある。災害現場のがれきの下から救急医療を開始することで救える命を救うべく、全国から約340隊、1500人以上が派遣されてがんばってきた。もちろん、現場の避難所での医療もDMATの使命である。日本DMATは急速に隊員数を伸ばし、3月10日現在都道府県が指定した443病院で846隊、5265人が登録され出動準備が整っている。
 DMAT隊は医師2人、看護師2人、医療事務1人の5人で構成され、4日間の初期研修を終了している専門家集団である。厚生労働省指導課が主管で事務局は国立病院機構災害医療センター内にある。被災自治体では、積極的にDMATの活用を考えるべきである。
 災害での大きな心的ストレスがかかった被災者の中には、数週間から1カ月程度経過したころから、眠れない、おびえる、話をしたくない、など精神的にうつ状態に陥る場合がある。これを心的外傷後ストレス障害(PTSD)という。特に災害弱者といわれる高齢者や子供たちに多く出現する。この対策に力を尽くす必要がある。』



doctor_b3 at 09:07|PermalinkComments(0)TrackBack(0)コンサルタント日記 

2011年03月18日

社説:東日本大震災 医療総動員で命を救え

 本日の毎日新聞社説の記事です。震災の被害が日に日に拡大しています。原発も心配ですね。また、避難所で亡くなってる方も増えています。日本国民全体で協力してこの危機を乗り切らないといけません。内容は下記の通りです。


『被災地に雪が降り、氷点下の気温が続く。福島県と岩手県の避難所では高齢者計15人が亡くなっていた。福島第1原発の放射能漏れで避難指示の圏内にあった病院や老人ホームから移ってきた人々が多い。医療施設などに保護される予定だったが、移動中のバスの中で亡くなったとみられる人もいる。
 地震と津波で多くの医療機関が被災し、残った病院は重症患者があふれている。寒くて食べる物も十分にない避難所で体力を奪われ免疫力が落ちて感染症が広がる恐れがある。もともと高齢化率が30%前後の市町村が多い地域である。要介護者や持病のある人は多い。薬は底をつきつつある。動けない患者のために訪問診療・介護をしようにもガソリンがない。肉親を失うなどして精神的に深い傷を負った人のケアも重要だ。
 被災した地域はあまりにも広く、医療や介護はあまりにも足りない。薬や食料の輸送車両は燃料不足や通行規制のため避難所までなかなか届かない。ほかの地域での買い占めによって品薄になっている面もある。必要な物資の調達について政府がもっと強い指導力を発揮すべきだ。
 屋内退避の指示が出た原発から30キロ圏内では極端な物不足に陥っている。いざという時にもガソリンがないため逃げられない。遺体を火葬することもできない。ボランティアが歩いて高齢者の自宅を訪ねて世話をしているという。
 厚生労働省は震災で家を失った人の医療費の窓口負担を免除したり、公的負担医療の証明書をなくした場合でも医療費の免除や助成を受けられるよう都道府県に通知した。当然の措置である。しかし、治療そのものを受けられないのが被災地の現状でもある。医療や介護の関係団体に協力を求め医療・介護スタッフを確保し現地に派遣すべきだ。被災地の自治体の指揮命令系統が機能していない今、中央省庁が平常通りに情報収集して対策を練っていては貴重な時間が失われるばかりだろう。
 通常の救急救命医療と災害医療は違う。被災地での活動場所をできるだけ早く決めて、輸送と通信を確保すること。そして、とにかく現場に入ることが何よりも肝要だといわれる。医療や介護のニーズは多様で日に日に変化していく。現場で考えながら動くしかないのだ。
 40万人以上の被災者が計12都県の避難所に身を寄せている。行方がわからない人もまだ2万人以上いる。今、政府に求められることは、できるだけ早く多くの人と物を結集し、被災地で臨機応変に働けるよう調整することだ。時間がない。』



doctor_b3 at 08:49|PermalinkComments(0)TrackBack(0)コンサルタント日記 

2011年03月04日

受診控えで死亡 国民の命を守る社会づくりを

 本日の愛媛新聞の記事です。先日、別のブログでも同じテーマについて原稿を書きましたが、本当に深刻な事態ですね。一刻も早く対策を講じるべきです。政治家も党の内紛や他党の揚げ足取りばかりしている場合ではないですね。内容は下記の通りです。


『「最小不幸社会の実現」をうたう政府が運営する、これがこの国の実態なのか。
 国民健康保険(国保)の保険料滞納で無保険になったり、加入しているが医療費負担ができず受診が遅れたりして亡くなった人が、昨年は24都道府県で71人に上った。
 前年の47人の1・5倍だ。あらゆる国民が十分な医療を受けられる国民皆保険制度が始まって半世紀だが、調査した全日本民主医療機関連合会(全医連)は「もはや国民皆保険制度は崩壊している」と指摘している。
 厳しい経済状況や雇用情勢の中、格差が是正されないままの日本社会。経済の右肩上がりの時代は終わり、人口減、高齢化が進み、保険制度の理念は揺らいでいる。
 いまの日本は貧困が再生産されているだけでなく、富の不均衡が国民の命さえ奪っている。この現実を、社会全体が共有しなければならない。
 国民の命を守るのが、まずは政治の要諦だ。現実に受診できない人がいる現状を認識し、まずはその救済に最優先で取り組む必要がある。
 全医連によると、71人のうち保険料を滞納していた人が42人。うち、全く保険がない「無保険」は25人に上る。また、職業別では無職が26人、非正規10人など、生活困窮の実態を反映している。
 格差はいまも、着実に広がっているのだ。
 腹水が出たが約5カ月間、がまんし続けた人。銭湯などで寝泊まりし初受診からわずか12日後に亡くなった人。車中泊で保護されたが手遅れだった人、などなど。
 やりきれない。無念の死を迎えた人々に、手を差し伸べられなかった社会。救うことができなかった行政。これが世界トップクラスの国内総生産(GDP)を誇る、先進国の現状なのだ。
 しかもこの数字は、おそらく氷山の一角であろう。
 民医連が調査した医療機関は加盟病院や診療所計1767施設だ。さらに多くの困窮者がいるのは確実で、国には実態調査を求めたい。
 救済策として、低所得者などの支払いを減免する「無料低額診療事業」を行う病院が増えている。自治体によっては無保険の場合も、条件によって減免する例もある。
 しかし制度の周知は進まず多くの生活困窮者は救われないままだ。医療機関と生活支援団体、行政などが連携し、救える命を確実に救うシステムの構築も急がれよう。
 本来は、社会的弱者を生まない社会こそを目指さねばならない。国保制度の見直しはむろん、経済を再生し雇用を安定させ、国民が安心して命を預けられる社会を構築することこそ、国の責任だ。
 「最小不幸社会」とは、そういうことではないのか。』



doctor_b3 at 08:55|PermalinkComments(0)TrackBack(0)コンサルタント日記 
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